教育用例文コーパスSCoRE(Sentence Corpus of Remedial English)は,簡潔で自然な英文とその日本語対訳をウェブ上で自由に(無料・登録不要)閲覧・検索・コピー・ダウンロード・Webテストに利用できる「データ駆動型英語学習支援プログラム」です。
コーパス(「生」の英語の集積データ)を英語教育に利用する手法のひとつに,データ駆動型学習(Data-driven Learning: DDL)があります。DDLとは,「自分で英語の語句や文法の規則を発見する学習」であり,中学・高校で経験したことのない「新鮮な学習方法」であるとして,大学一般英語授業において語彙や文法の指導方法のひとつとしてその教育効果が実証されています。DDLを利用した学習者の肯定的な評価も継続して報告されています。DDLでは,英語学習者がコーパスから検索ツールを使ってターゲット語を検索し,豊富な言語使用例を見てことばの規則を発見して学んでいくため,実際の英語学習にDDLを取り入れるには,「適切なレベルの教育用コーパス」と「ユーザー・フレンドリーなツール」が必要となります。そこでSCoREプロジェクトでは両者の開発に取り組み,初・中・上級3レベルの英語例文を自由に学習利用できる支援ツールを公開しています。
SCoREには,著者らがこれまでに行ってきた英語初級者向けコーパスデータの適性に関する基礎研究にもとづいて,英語ネイティブスピーカーが教育的基準に配慮しつつ,独自に構築したソース・コーパスを参考にしながら,慎重に作成した簡潔で自然な英語例文約10,000文と,日本人英語教師が丁寧に付けた日本語対訳文からなるSCoREコーパスを搭載しています。英語例文は,「関係詞」「仮定法」などの22の文法項目ごとに,また,初級・中級・上級のレベル別に適切に利用することができます。
SCoREは4つのツールで構成されています。
(1)「パターンブラウザ」ではSCoREに含まれる文法項目,キーワード,例文のすべてのデータを閲覧できます。 (2)「コンコーダンス」は SCoREの例文を検索し,英語例文と日本語訳の検索結果を表示するツールです。 (3)「適語補充問題」ではSCoREの例文を利用して適語補充問題(小テスト)の作成,出題,採点ができます。 (4)「SCoRE のダウンロード」はSCoREの例文をExcelファイル形式でダウンロードできるツールです。それぞれのツールは,トップページや,各ツールの右上方の「ツールの切り替え」メニューを選択して使用します。詳細は,ユーザガイドをご覧ください。
SCoREコーパスの例文は,クリエイティブコモンズの「表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際」CC BY-NC-SA 4.0ライセンスで提供されていますので,ダウンロードする前にライセンス条項を確認してください。非営利で使用する限り,先生方の教材作成支援サイトとして日常的に活用できます。
SCoREデータを引用する場合には,以下の論文を引用してください。
Chujo, K., Oghigian, K. and Akasegawa, S. “A corpus and grammatical browsing system for remedial EFL learners,” In A. Leńko-Szymańska and A. Boulton (eds.), Multiple Affordances of Language Corpora for Data-driven Learning. Amsterdam: John Benjamins, 2015, 109-128. |
SCoREプロジェクトは,中條清美(日本大学)がリーダーを務めた平成21-24年度科研費基盤(B)(21320107),25-28年度科研費基盤(B)(25284108),29-32年度科研費基盤(B)(17H02366)の成果です。SCoREの他にもコーパス支援学習ツールや教材・資料を開発しており,それらを利用しやすいDDLオープンプラットフォームを構築しています。2020年度からは,西垣知佳子(千葉大学)がSCoREプロジェクトを引き継ぎ、同氏が研究代表を務める令和2-5年度科研費基盤(B)(20H01277),令和6-9年度科研費基盤(B)(24K00083)により,SCoREの一般公開・改修を行っています。
SCoREは,日本の高校英語教科書レベルの範囲内にある3,000万語のソース・コーパス(多読教材,各国の英語教科書,子供向けWebニュースなどの英文テキスト)に基づいています。ソース・コーパスから日本人学習者が不得意とする文法項目に対応する高頻度動詞などのキーワードが抽出されました。そして,英語教育経験のある英語母語話者が,ソース・コーパスより抽出された英文を参考にして,簡潔で自然な英語例文をオリジナルに作成しました。
SCoREの英語例文は文法項目別に利用できます。日本人の初級英語学習者が不得意とする文法項目を調査したテスト結果に基づいて文法項目が選定されています(中條他 2012)。中学文法項目においては所有代名詞,名詞複数形,現在完了形など,高校文法項目においては仮定法,関係詞,前置詞などが30%以上の学習者が正解できなかった不得意項目であることが特定されました。SCoRE第三次開発にはこのような22項目の文法項目が含まれています。
文法項目別に加えて,キーワード別に利用できます。これらの不得意文法項目を含む英文をソース・コーパスから抽出し,それぞれの文法項目に対応する,高頻度動詞などのキーワードや高頻度な連結パターンなどのキーフレーズを選定しました。Table 3に示すように,例えば,仮定法過去のキーワードは were, went, wanted, knew, got, cameなど,仮定法wishのキーワードはcould, were, had, would, knewなど,関係詞のキーフレーズは a person who, a man who, someone who, a thing that などがあります。
SCoREの英語例文の難易度レベルは,「文長」と「語彙習得学年」に基づいて区分されています。初級は8語以内の文で,米国の語彙習得学年の1~2年生の語彙を用いて作成され(e.g. What is it called?),中級は5語から11語以内の文で, 1年~3年生の語彙を用い(e.g. My little brother was called Tommy by his friends.),上級は9語以上の文で, 4年生以上の語彙を含むことを基準としています(e.g. She has been called a genius by her contemporaries.)。難易度レベルを選択できることによって,学習者の英語習熟度の個人差に対応した学習支援に利用できます。
SCoREでは,日本人学習者にとって必要性の高い文法項目に対応する英語例文を英語母語話者が作例し,日本語対訳を人手で付けています。英語例文を新たに作成する理由のひとつは,英文ソース・コーパスから抽出された英文は著作権が存在するため,教育実践用に公開することは不可能であったためです。そこで,英語教育経験のある英語母語話者が,ソース・コーパスから抽出した英文などをモデルにして,COCAなどの大規模コーパスも参照しながら,簡潔で自然なオリジナルの英語例文を作成しています。このような手順を踏んだ理由は,英語学習には学習者がターゲットとする文法項目を明確に認識できるクリアな例文が必要なこと,例文の真正性(modified authenticity)を可能な限り担保するためです。詳細については,中條他(2015)を参照してください。
SCoREの開発では,「どんな検索語でも検索結果が得られる」ように,多彩なトピックの例文の拡充を図ってきました。1.30版で新たに追加したトピック別語彙例文は,Corpus of Contemporary American English (COCA) から抽出されたThematic Words(Davies & Gardner, 2010*)に基づいています。まず,Thematic Wordsの30の主題分野から教育目的を考慮して14の主題分野を選定し,次に,それらに属するキーワード916語を含む初級レベルの英語例文を英語母語話者がキーワードごとに5文ずつ計5,217文(32,713語)を作例しています(下記の表参照)。
主題分野 | キーワード | 例文数 |
Animals | dog, bird, horse, chicken, cat, fox, など44語 | 441文 |
Body | hand, eye, head, face, back, arm, hair, など43語 | 430文 |
Clothing | suit, shoe, ring, shirt, dress, hat, tie, など41語 | 400文 |
Colors | white, black, red, green, blue, brown, など19語 | 190文 |
Emotions | sorry, afraid, angry, crazy, guity, nervous, など80語 | 401文 |
Family | child, mother, father, kid, parent, wife, など51語 | 257文 |
Foods | cup, dinner, plate, lunch, meal, knife, など99語 | 495文 |
Materials | paper, glass, wood, stone, gold, plastic, metal, など44語 | 219文 |
Nationalities | American, Indian, English, French, African, など51語 | 244文 |
Professions | president, director, official, worker, manager, など64語 | 621文 |
Sports and Recreation | point, game, team, win, record, score, shoot, ball, など90語 | 450文 |
Time | now, early, ago, age, moment, period, date, など69語 | 345文 |
Transportation | street, drive, road, fly, station, driver, flight, など73語 | 365文 |
Weather | hot, cold, cool, warm, dry, mild, sunny, damp, など73語 | 359文 |
キーワード合計 916語 | 5,217文 |
*Davies, M., and Gardner, D. A Frequency Dictionary of Contemporary American English: Word Sketches, Collocates, and Thematic Lists. London and New York: Routledge, 2010.
SCoREは,日本国内だけでなく,海外の英語学習者にも利用できるように英語版のほか,海外の英語学習者の割合を考慮して,スペイン語版,中国語版を提供しています。日本語版のトップページの右上にある[English]ボタンをクリックすると,英語版のトップページに移動します。画面上に多言語版の各ツールへのリンクボタンがあります。スペイン語訳と中国語訳にはGoogleのCloud Translation APIを使用しています。
■リーダー |
中條 清美(元日本大学) |
■メンバー |
赤瀬川 史朗(Lago言語研究所) |
アントニ・ローレンス(早稲田大学) |
マイケル・ジナング(日本大学) |
サラ・ジナング(元バードカレッジ) |
濱田 彰(明海大学) |
石井 卓己(筑波大学) |
小林 雄一郎(日本大学) |
松下 達彦(東京大学) |
水本 篤(関西大学) |
西垣 知佳子(千葉大学) |
キャサリン・オヒガン(元東京国際大学) |
田辺 和子(日本女子大学) |
宇佐美 裕子(東海大学) |
内山 将夫(情報通信研究機構) |
若松 弘子(筑波大学) |
横田 賢司(東京国際大学) |
アルファベット順,2020年6月現在 |
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/b51pp1-12.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/b50.2%20SCOREthird.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/b48.3%20Kiyou%20SCoRE.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/TL2014-58.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/5reportnote.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/SCoRE-secondb49.3.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/NLP2016P19-3.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/b51pp13-26.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/b51pp27-36.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/expo2016-67-68.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/b50.1%20WebSCoRE.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/b48.4%20Kiyou%20LWP.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/2014-b47.6.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/2014-b47.8.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/2013%20Nichidai%20Kiyou%20Siryo
%20b46.4.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/LLS4-19306636.pdf
http://journals.cambridge.org/abstract_S0958344015000208
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/A%20Meta-analysis%20of%20Data-driven%20Learning.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/2013%20Nichidai%20Kiyou%20Note
%20b46.1.pdf
http://hanamizuki2010.sakura.ne.jp/public_html/data/DDL%20test%20b49.4..pdf
SCoREプロジェクトでは,多様な学習者のニーズに応えて,豊富な英文の実例を見て帰納的に語彙や文法の規則の学習(データ駆動型英語学習;Data-driven Learning; DDL)が可能になるように,SCoREとともに次のツールを開発しています。
SCoRE ユーザガイド (PDFファイル)
ブラウザは,PC用のChrome, Firefox,Safari,Edgeをお使いください。タブレット端末やスマートフォンのブラウザには対応していません。
2024/7/1 | 1.40版公開 |
2020/7/7 | 1.30版公開 |
2018/3/30 | 1.20版公開 |
2017/2/20 | 1.10版公開 |
2016/7/7 | 1.00版公開 |
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